VaRの算出

投資に対して大体どれくらいリターンが望めそうかというのは期待値を計算すれば良いが、一方で「最悪どれくらい負けうるのか」ということも重要。例えば手元資金100万に対して、全部負けてもよいと思ってるのか、50万負けたら違うものに投資しようか、などという判断に用いられる。

このように「ある確率のもと、いくらまで負けうるのか」という指標がVaR(バリューアットリスク、バー)。書き方がVariance(分散)と似てるので稀に紛らわしい。例えば、「99%VaRが10万」というと、「99%の確率で、損失は10万に収まる」という意味。

これは正規分布に対応している。エクセルで、=normsdist(rand())として乱数を多く発生させてヒストグラムを書くと正規分布ができる。下記は、10000個の乱数からヒストグラムを書いたもの。

で、=normsinv(0.99)とやると確かめられるように、正規分布の99%点に当たるのは大体2.33σ。なので、上記の図のように、99%までカバーするためには、σを出してそれを2.33倍すればよいということがわかる。これが、正規分布を仮定した場合のVaRの算出方法。

ここで一応注意したいのが、VaRを元本に対する割合で出しているのか、金額で出しているのか。たとえば、300万持っていてVaR=10といったとき、10%なら300*10%=30万、10万ならそのまま10万。辺り前すぎるけど一応注意して、リターンの標準偏差を出して、2.33σとした場合には「何%まで損しうるか」、2.33*Position*σとした場合には「いくら損しうるか」となる。

前回の記事のデータを用いると、(average,stdev)=(0.0001169,0.0108586777)という感じだったので、VaRは、2.33*0.01085=2.528%となる。

じゃあこれで大体よいか、と元データのリターンのヒストグラムを書いてみると、下記の通り。

データ数が少ないので仕方がないが、どう見ても正規分布ではない。デルタ法だと正規分布を仮定しているが、下図のように実際の分布が正規分布ではないことは多々ある。そこで考えられた一つの方法が、Historical法。これは、過去に起こったリターンの、99%tile点をとるというもの。例えばリターンのデータが100個あったら、99番目をとれば良い。今は、リターンのデータ数が249個なので、1/249=0.004=0.4%なので、下から2番目と3番目の間に99%tile点が来るとわかる。


ということで、まずリターンのデータをソートし、下から2,3番目をとる。r[0]が1番目なので、2,3を表示するには、

r.sort()
r[1]
r[2]

とすればよい。


で、この2つからざっくり補間。

slope=(r[2]-r[1])/(1/249.0)
intercept=r[1]-slope*(2/249.0)
VaR=0.01*slope+intercept

とすると、-0.0288と計算される。もう少しエレガントな方法でやりたいところですが…データ250個としたのでとりあえず簡単のためにこれで。
(ヒストリカル法だとポジションが逆ならそのまま損失も分布の反対側に位置するので1%tileと99%tileをどちらも出すこともあるようだけど本質的に同じ内容なので割愛)
ヒストリカル法は、過去データをどこまでとるかという問題がある。例えば過去1年間とやるとリーマンの時期が入らない。逆に長くすれば良いというものでもなく、例えば5年前は大不況・1日5%の変化も恒常的に発生、ところが直近は安定的・1日0.1%しかうごかないことがほとんど、といった場合、5年間を見るのは現状にマッチしていないという考え方もできる。

また、他の手法としてモンテカルロ法モンテカルロでパス出してそこからPL計算、99%点をとる、というものもあるが、このように超プレーンの場合には結局与えた平均・分散に依存して面白い結果にならないのでこれも割愛。エキゾチックな商品に使うのがよいと思います。たぶん。

ということでまとめとして、

手法 VaRの値 特徴
VCV 2.528% 正規分布を仮定、sigma出せば良いので簡単
ヒストリカル 2.888% 分布の仮定必要なし、どこまでデータをさかのぼるか
モンテカルロ --- エキゾチックに用いる

といった感じか。


またプログラムで比較するには、前回の記事のコードの最後に、

r.sort()
r[1]
r[2]
slope=(r[2]-r[1])/(1/249.0)
intercept=r[1]-slope*(2/249.0)
print 2.33*stdev
print 0.01*slope+intercept

とするだけ。

一番わかりやすいと思う参考書は下記。少し古いけどとっつきやすいと思います。

市場リスクの計量化とVaR (シリーズ 現代金融工学)

市場リスクの計量化とVaR (シリーズ 現代金融工学)