金利変動の影響

円安株高で騒がれているけれども、それらを引き起こした日銀の緩和策のまとめを今一度整理したいと思ったが、その過程で結局は国債金利がどう動いてそれがどう影響するかということに行きつくと思ったので、日銀のペーパーを読んだりしつつ勉強。

まず、先日の政策決定会合で発表された質的量的緩和の中で重要なのは下記の通り。
2年で2%の消費者物価上昇が目標。
1.操作目標を無担保オーバーナイトからマネタリーベースへ
2.国債の買い入れを進める:平均残存期間を3年から7年へ

そもそも消費者物価上昇を狙うのは、景気低迷の元凶が消費者物価が前年比マイナスあるいは0%にとどまってきた(デフレ)からだと考えられているため。個人的には「インフレだから景気が良くなる」というのは前後関係がおかしい気がするが、一応、インフレターゲットを定める→安いうちにお金をつかおうとする動きが出る→お金の回りがよくなって景気が良くなる、という流れが受け入れられている。

それにあたって、お金の回りをよくする必要がある。その方法として、これまでは金利を操作することによって世の中の金回りを操作しようとしていたが、それを直接的に世の中の金回りを操作することを目標とする。金利を操作するというのは、日銀から銀行に対しての貸しを低金利で行い、銀行が低金利で個々人・企業にお金を貸し出せるようにすることで、世の中へお金を循環させようとする方法。一方のマネタリーベースというのは日銀当座預金(銀行の、日銀にある口座)と現金通貨の和で、それを直接コントロールする路線に変更。日銀の発表によると、マネタリーベスは2012末の138兆円から270兆円程度まで増やすことが目標となっている。

それを行うための一つの方法が、国債の買い入れ。現在、個人国債もあるが銀行や生保等が多くの国債を持っている。これは、預金等が増加するものの借り手がいないために結果的に安全資産としての国債で運用しなければならなくなったという背景がある。日銀のある論文(国債金利の変動が金融・経済に及ぼす影響)を読んでみると、国債保有額は、大手行の合計で140兆程度、地銀の合計で60兆程度とある。ただし、内訳として大手行は短中期債が多い一方で、地銀は比較的長期債の割合が高い傾向にある。

一般に、債券は残存期間が長いほど、金利変化による影響が大きいので、仮に0.1%金利が変化したときに被る影響は長期債の方が大きい。すなわち、地銀のほうがポジションに対して大きい金利リスクにさらされている。また、生保も比較的年限の長い債券で運用している。ということは長期債の金利上昇によって影響を受けやすいのは地銀に加えて生保も、ということになる。

この論文では、
・どの年限の金利が上昇するか
金利上昇は債券の評価損だけではなく、貸出金利等にも影響する
・金融セクターに生じた影響はその他のセクターにも影響する
という3点について考察を深めている。


これに対して、金利がパラレルシフトする、スティープ化する、フラット化する、の3シナリオにおける影響を見ている。パラレルシフトは今のイールドカーブがそのまま上昇、スティープ化は長期のイールドが増加、フラット化は短期のイールドが増加。

シミュレーション結果では、パラレルに上昇した場合が最もマイナスの影響が大きく、次にフラット化、一番影響が小さいのがスティープ化だとしている。これは、短期債の比率が大きいということが理由。

2003年のVaRショックの際には、金利が当時史上最低の0.43%まで下がったが、今回もそれくらいまで下がっていた(今は0.6%くらいに落ち着いている)。債券が高くなりすぎて(金利が低くなりすぎて)債券への需要が少なくなると、急反発を招く可能性がある点には注意が必要かもしれない。またその際、イールドカーブの形状によって不利益を被るセクターが大手銀行、地銀・生保となるのかにも合わせて注意する必要がある。

平均残存期間を3から7に伸ばすということは、短期よりも長期の重みを増やすということ。それに伴ってイールドカーブはフラット化するのでそれだけで言うならば短期債価格下落・長期債価格上昇で、短期債で運用している大手行が相対的に不利ということになろうか。

今後に注目したい。