wrong way risk modeling
Risk誌の論文。カウンターパーティリスクの管理において、デリバの時価だけではなくて担保のほうも考えなければいけない、という話。
デリバ取引をおこなうと、満期までの間に損得が発生する。相手方に対してこちらが勝っているポジション(例えば固定受けスワップを組んで、変動金利がものすごく下がった場合など)のとき、相手がデフォルトすると勝ち分をとりっぱぐれてしまう。
これを防ぐためには担保をいれてもらうという方法がある。しかし、担保が現金で入っていればよいが、債券などでいれてもらう場合もある。その場合、デリバの価値があがるときに担保の価値が下がるようだと、自社にとっては担保の意味が薄れる。これがWrong Way Riskとか誤方向リスクとか呼ばれるものである。
例として、アメリカの銀行とデリバを組み、米国債を担保としてうけとっている場合が挙げられる。当然アメリカの銀行は、アメリカがデフォルトした場合にはともにデフォルトする可能性が高い。そうすると、このカウンターパーティからは受け取っている担保が意味をなさないものとなる。
wrong way riskは、デフォルト過程とデリバの時価の過程との相関を考慮することで算出する。これらの相関が高いほど、wrong way riskも高いということ。
wrong way riskは、CVAにも関係する。近年、カウンターパーティリスクの管理方法としてCVAと呼ばれるものがある。もともと、相手との取引を行う際には常にリスクが伴うが、デリバティブ取引と融資の場合とでは決定的に異なる点がある。それは、デリバは日々時価変動するということ。
融資は一度融資枠を決めればそれ以上損することはない。一方デリバの場合はマーケット状況によって日々変動するため、ある額までしか取引したくなくても、それ以上の額を相手に負わせることになる場合がある。
この管理のために、従来は元本いくらまでしか取引しない、などという管理方法がとられてきた。これに対して、カウンターパーティのデフォルト率等も考慮しようというのがCVA。
CVAとは、Credit Value Adjustmentのことで、ざっくり計算するには満期までのリスクプロファイルを描き、その正の部分の平均に、各時点のデフォルト率を掛け合わせればよい。つまり、ある相手と取引を行った場合平均的にはいくら損しそうか、という概念。
当然相手の信用力が高くデフォルト率が低ければ、CVAの値は低くなる。例えば金利スワップを行うといったとき、同じ取引をトヨタと行うのと地方の中小企業と行うのとでは、前者のほうが満期まで無事に取引を行える可能性が高い。
で、このCVAを考えるにあたっても、担保が入っている場合にはCVAの値が小さくなるべきだという考えから、担保とデリバが出てくる。その場合、wrong way riskの概念が必要となる。
こちらの論文に詳しく書かれている。
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/11-J-01.pdf
CVAについては、日本語の本だと多分これくらいしか出ていない。*1
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*1:他ご存知でしたら是非教えてください