レイダリオ 30分で分かる経済の仕組み

ヘッジファンド、ブリッジウォーターアソシエーツCEO、レイダリオが経済はどう動くかを解説した動画。ネット上では全文書き起こしもあったが、上記の動画を見てみたのでそのまとめ。

経済はシンプル
経済の動きは、生産、短期の債務サイクル、そして長期の債務サイクル、この3つで成り立っており、これらを捉える事が必要。ではこれらはどう動いていくのか。

まず、経済活動というものは全て取引、すなわち、モノやサービスの売買から成り立っている。これは基本的には現金と物・サービスの交換だが、現金を今払うのではなく後で払うという手段がある。この時債権者(モノ・サービスを渡したほう)は、相手に対して「信用(クレジット)」を供与していることになる。

経済活動におけるクレジットの役割
ある人が取引の結果得られた金銭を用いて今度はそれを使って何かを買う。今度はその取引を通して金銭を得た人はそれを使って何かを買う…というように、誰かのIncome=取引相手のSpendingという関係が成り立っている。この時、信用を供与してもらうことで、現在持っている現金以上の取引をすることが可能になる。クレジットがない世界においては、経済成長の原動力は生産を増やすしかない。一方で、クレジットがある世界においては、借りを用いることができ、それを生産性の向上に向けることが出来れば成長につなげることができる。借りたものはいつかは返す必要があり、それには金利をつける必要があるが、借りの金利よりも生産性向上によって得られる利益が高ければ成長が実現することとなる。

つまり、クレジットは経済成長を実現するための重要な手段の一つとなっている。

中央銀行の役割
クレジットは、取引相手の財務状況等によっても変わってくるが、信用供与を行ったうえで取引を行うかどうかの一つの重要な指標が金利である。クレジットが悪い相手に貸すからには金利を高く設定したいし、金利が同じならば信用力の高い相手と取引を行いたい。その時の金利の基準を決めるのが中央銀行の大きな役割の一つである。金利水準を操作することによって、クレジットのフローを決めることができる。金利を低く設定しある程度経済が成長し、過熱気味だと感じられた場合には金利の引き締めを行い、市中の投資や消費を下げることを狙う。反対に、景気が悪くなった場合には金利の引き下げ等を通して再び成長を狙うこととなる。

景気のサイクルと対応
景気にはサイクルがある。短期サイクルは基本的には長期のトレンドに乗りながら、その周りで上下に動いていく。クレジットの供与によってサイクルが上下していく。金融危機の際にはクレジットが収縮し、サイクルは下方向へと向かう。これに対して中央銀行は、金利を下げてクレジットのフローを増大することを狙うのが伝統的な対策の一つだった。


今後の対応

金利がこれ以上下げられない昨今においては、これまでの方法だけでは景気を刺激することはできなくなってきている。そこで、今後の(あるいは現在進行形で試されている)方法として、1)Spending cut 2)Reduce Debt 3)Redistributing the wealth 4)Printing moneyの4つが挙げられている。しかし、今のところ1や2では税収も減ることが原因で政府の財政状況はますます悪くなることが、3では政情不安を呼ぶ可能性が、そして4では歯止めのきかないインフレを引き起こしかねうる可能性が挙げられている。これらのバランスを保ちながら、次の3つを守ることが重要と締めくくっている。
1) 所得の増加よりも債務の増加が早いという状況を引き起こさない
2) 所得の増加よりも生産性の増加が早いという状況を引き起こさない
3) 生産性を向上させる




1や2は政策でどうにかなりそうなのに対し、3は特に先進国においてはなかなかそうはいかないように思う。生産性の向上に加えて、結局のところは新規産業を生み出す仕組みづくりも重要なのではないかと感じる。