ソニーがサードポイントの提案を真剣に検討?
ソニーがエンタメ部門の一部売却を検討して、モルスタやシティをアドバイザリに起用したようです。これは、2週間前くらいにアメリカの投資会社サードポイントのダニエルローブ氏が、ソニーの経営陣に対して書簡でそういった要求を出したことを受けてのもの。書簡では、エンタメ事業の15〜20%位を売却して本業に集中しよう、と言っている。ちなみにサードポイントでは、6,400万株持ってるらしい。今大体ひと株2000円くらいのようなので、約1300億。一方時価総額は2兆なので、6.5%保有していることとなる。
・ソニーの事業ポートフォリオ
エンタメの15〜20、と言われてもそもそもどのような配分になっているか知らないので調べてみると、現在のソニーの事業は、下記のようになっている。
- イメージングプロダクツ&ソリューション(カメラ系):9.4%
- ゲーム:9.3%
- モバイルプロダクツアンドソリューション(携帯):19.1%
- ホームエンターテイメントアンドサウンド(テレビ、オーディオ):10%
- デバイス(電池とか):8.9%
- 映画:11.2%
- 音楽:6.3%
- 金融:17.1%
- その他:略
(ソニーの2012年3月期報告書より)
まず横文字が多くてよくわからないけど、そこは適当に注記してみた。ソニーの製品、としてすぐ思いつくのは、ホームエンターテイメント辺りか(テレビ、オーディオ)。しかし一番多いのはもう携帯類になっている。最近だと携帯が音楽プレイヤーやゲームの代わりになっていることを考えると、これはある意味当然の傾向と言えるかもしれない。
但しこれらの数値は売上高ベースでの事業の配分。今度はそれぞれの事業の利益についてみてみると、
- イメージングプロダクツ&ソリューション(カメラ系):-109
- ゲーム:-16
- モバイルプロダクツアンドソリューション(携帯):-246
- ホームエンターテイメントアンドサウンド(テレビ、オーディオ):-505
- デバイス(電池とか):-115
- 映画:195
- 音楽:57
- 金融:528
- その他:1053
(単位は億円)
で、通期では430億円の黒字。ということで、売り上げベースで主力である&「ソニーといえば」で思いつく商品類であろう、携帯、テレビ・オーディオ、カメラは全て赤字。一方、今回差0度ポイントが切り離しを提案している、映画・音楽は黒字。もっと言うと、金融が稼ぎ頭となっている。(コングロマリットが金融で稼ぐようになるというのはGEなんかを見てもそうなのでよくある方向なのかも)
・サードポイントの提案
サードポイントの提案は、「エンタメ部門を分社化させてアメリカで上場、そこで得た資金を本業の回復にあてよう」というもの。この背景には、現在アメリカでメディア株ブームが起きていることがあるっぽい。ソニーは多くの音楽・映画の版権をもっている。配給会社と協力してこれらの版権をうまく利用することができれば、エンタメ部門からの稼ぎは大きくなるだろうという見込みがあるように思われる。
・分社化するとどうなるか
結局のところ、ソニーの命運はハードウェアからソフトウェアへの転換を図れるか、あるいは、ハードウェアも自分たちのところで作るのではなく外部委託をうまく利用できるかというところにかかっているのではないか。これくらいの大企業になると、どうしても為替の影響を少なからず受ける面はあり、その場合にハードウェアを自分たちで作成する仕組みを抱えていると、身動きがとりづらい。
エンタメ部門を切り離してうまくメディア株ブームに乗れたとして、エンタメ部門の利益が出てそれを本業に回したところで、現在の仕組みのままで投資資金が回収できるとは考えづらい。徐々に、ハードなプロダクツから脱却する、あるいはハードを作る方法を変えていくことが必要だろう。切り離しで得られた資金をそのような方向に活用できるかで、今後のソニーが決まるのではないかな、と感じる。結局メーカーが共通して抱えている課題はこのあたりなのかな。