20歳の自分に受けさせたい文章講義

ツイッターで一瞬(?)話題になっていたこの本。

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

パラパラめくると「話せるのに書けない」を克服するのを本書の第一目標として掲げている。自分も、ある内容について人とある程度議論は出来る=おそらくある程度の知識はあるはず、なのに、いざ同内容について書こうとすると書けなかったり時間がかかったりしてしまう。本書の第一目標に合致、ということで読んでみた。

・感想文を書くには
作文の典型的な例に読書感想文があるが、ただ「面白かった」ではなく、物語の内容・魅力・ポイント・欠点などあらゆることを自分の頭で整理・再構築したのちにアウトプットする必要があるとのこと。

これは感想文だけに言えたことではなく、仕事なんかでも、ある疑問が生まれた時に人に聞いて「へえそういうもんか」と捉えるのと「なんでそういう仕組みなんだろう」と自分なりに考えなおすことは重要だと感じる。

また、

誰かに「自分の言葉で」話すことによって、バラバラに散らばった内容を再構築し、理解を深めていくのである。

ともあったが、確かに人と話しているうちに実は気づいていなかった論点が浮かびあがったりして理解が深まるということもある。人に教える過程で気付かされる、というのもまた然り。これらを行うには、まずは事実を自分なりに咀嚼する必要があるが、そのためのトレーニングとして、自分の意見を一切いれずにある物事(写真、地図など)を描写するという方法が紹介されていた。普段の仕事で言うと業務内容をちゃんと表現できるか、といったところだろうか。

・文章のリズムが重要
読みやすい文章にはリズムがあるらしい。「文章のリズムとは何か。定義が必要だ。」と言いつつ「文章のリズムとは…」と、明確に定義されていないのはご愛敬。。。おそらく、筆者は「文章のリズム」を「論理展開がしっかりとなされていて、ぱっと見で読みやすい文章」という意味で使っている。そのもとで、論理展開を明確にする手段として接続詞をしっかり使うこと、ぱっと見読みやすい文章を実現するために、句読点・改行・漢字とひらがなのバランスをとることが重要と述べている。

また、もうひとつリズムを保つ方法として「断定」を挙げている。自分を振り返ると断定することはほぼない。「〜と思う」「〜と感じられる」などとどうしてもぼかしてしまう傾向にある。筆者はこれを、明確な論理展開さえあればその文脈での断定は恐れるに足らないことだと主張している。確かに読んでいてどこまでも煮え切らないものよりかは、論理を保って断定されている方が反論の余地は多少残っていても主張がわかりやすくて良い。この部分も少しずつ取り入れられればとおもう。

・読ませる文章
投稿された論文などとは異なり、普段の文章では「読まない」という選択肢をとられることがある。それを避けるには、導入部分で読ませるための工夫が必要となるが、その方法として

の3種類の方法が挙げられている。インパクトは強めの結論、寸止めは核心の周辺情報、Q&Aは全ての情報を盛り込む。このうちQ&Aの手法=全ての情報をまとめたサマリをトップにもってくるというのはよく行われるが、インパクトや寸止めの手法は自分はあまり使わない。徐々に習得が必要か。

・読者の椅子に座る
読者の立場になって文章を考えること。これも重要。本書ではいくつか紹介されていたが、疑似体験を起こすために詳細を述べる、説得ではなく納得、驚き・同意・発見、あたりをここでは紹介。

まず、「疑似体験を起こすために詳細を述べる」。読者を引き込むためにはある体験の詳細部分についても述べるべきだということ。文章を書いていると細かい描写は省いてしまうことが多いが、詳細が述べられているからこそ読者はその情景をうまく思い起こすことができるという部分に同意出来る。面倒でも細かい部分まで書くことが求められる場面もあるはず。

「説得ではなく納得」については、あらゆる文章で読者を説得する必要はなく、むしろ情報を読者の頭のなかで反芻してもらって同じ思考回路をたどってもらうことにより、納得してもらう意味合いが強い場面もあるということ。

最後に「驚き・同意・発見」について。これは上の「納得」にも多少関連するが、読者はいつも驚きを求めているわけではなく、「確かに、これ思っていたけれどもやっぱりそうだよな」と同意出来る文章だったり、「あ、そういう見方もあったか」と発見出来る文章に対しても満足感を持つことが出来る。自分自身も他のブログを見ていて、必ずしも新しい洞察がなくても同意出来るだけでも面白いと感じることはある。これはまさに、自分の中でもやもやしていたものが、その記事によって整理されて咀嚼できるからだろう。

・残念だったポイント
一点、この本の欠点をあげるとするならば、それぞれのテクニックが適用されるべき文章の種類が明確に述べられていなかったこと。学術論文と、プロジェクトの定期報告メールと、緊急事案が起こったときのメールはすべて異なるテクニックが使われるはずだ。もちろん共通して用いることができるテクニックもあるだろうが、Aには用いられるべきだがBには用いられるべきではない方法もあるはず。そういったものも明示されていればよかった。


ということで学んだテクニックを適宜取り入れながら文を書けるようになれればと思う。