投資はきれいごとで成功する

もう少し良いタイトルはなかったのかとか思うが。

鎌倉投信ファンドマネージャー。住友信託、バークレイズを経て2010年に鎌倉投信を創業。NHKプロフェッショナルでも取り上げられていた。

プロフェッショナルの番組内では、投資先選定の中で社員が会社に誇りを持っているかということを調べるため、社員と面談をして話を聞く場面が出てくるが、語り口は穏やかだったけどいざ自分が相手としたら対峙したら全て見透かされそうな雰囲気があった。

さて、本書では鎌倉投信について、これまでのファンドや金融と以下に異なっているかということを紹介している。まずは鎌倉投信のリターンの定義。通常は資産形成が目的だが、それに加えて社会の形成と心の形成、これら3つがあって初めて受益者も満たされる、という考えを持っているらしい。そのため、投資先を選ぶ際にはもっと多くの人に使ってほしいものかどうか、もっと成長してほしいと思えるかどうか、で判断している。

ということで「きれいごと」のように聞こえるが、本書内では実際にリターンもちゃんと出しているということを述べている。

実際ファンドについてみてみると(モーニングスターページ)ここ1年のトータルリターン(年率)は4.84%とそれなりに出ている。この期間、かたや日経平均は15%程度上昇しているのでかならずしも高いとはいえない気もするが、標準偏差で割ることで平準化すると、結い2101は0.726、日経平均は0.74程度(HistoricalVolの場合)程度となるので、悪くない。

一方で本書の中では「下げ相場でもあまり下がらない」という言及をしている。そこで8月後半にあった中国ショックの時を見てみると、8/18から8/25の1週間で、日経は20,554円から17,806円と約14%下げているのに対し、結い2101では16,612から15,357と9%程度の下げにとどまっている。とすると、激しいショックが与えられた時にもさほど下がっていないように見える。ということで、きれいごとのようだけども実際リターンも出してるし、ダウンサイドにも強い、守り型の投資として選択の余地があるように思える。

本よりファンドの紹介のようになってしまったが、投資、あるいは金融の本来の役割というものを果たそうとしているファンドだと思うので、例え儲けは多少目をつむったとしても応援したくなる。そこにこそ、このファンド及び新井さんの挑戦の価値があるのではないかと感じた。