働きながら社会を変える

普段、自分の仕事を通して、あるいは自分の仕事とは直接関係なくても、世の中に貢献するにはどうしたらいいのかということを考える人は多いと思う。特に、昨年の震災直後には多くの人がツイッターなどの簡易な方法から実際に現地へのボランティアツアーなどで本職以外の社会貢献ということを果たした。

こういった活動はとても素晴らしいと思うが、自分の仕事を通した社会貢献は別として、「働きながら」「本業以外の」部分での社会貢献活動を持続させることは非常に難しい。実際、震災直後は街頭で多くの人々が募金活動等を行っていたが最近はめっきり見かけない。

そもそも募金活動等はその募金対象の社会問題の認知度が低い場合に、関心を持たせる意味合い・募金対象を非常に限定して行うならいいが、「地震で大変です、募金しましょう」と大学生10人くらいで並んでいるのを見ると全員バイトしたほうがよほど金たまるんじゃないかとか思ってしまう。

それはさておき、本業以外でのこういった活動を継続的に行うためにはどういった組織であるべきなのかということを常々疑問に思っており、本書を手に取った。

働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む

働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む

著者の方はモルスタで勤務後、昇進を機にPEへ転職。26歳でLiving In Peace (LIP)を立ち上げた。

LIPでは、「機会の平等を通じた貧困削減」と「パートタイム活動の新しいモデルをつくること」を目指し、児童養護施設の子供たちが平等な機会を持てるように活動を行っている。活動の具体的な中身についてはLIPのホームページで紹介されている各事例、レポート等にゆずるとして、著者はこういった活動を継続的に行うために必要なこととして次の点を挙げている。

・関心を持つ
・発信する
・得意なことをやる
・本業を大切にする

社会貢献活動を行うに当たっては、関心を持ってから行動に移すまで、及び、それを継続的に行う点のハードルが高いのではないかと考える。そこでまずは「発信」である。こうやってブログに書くでもよし、ツイッター等で「こういう本を読んだ」という、友人・知人と話すなど、どういった形でもよいから発信することによってその中身について他の人にも知らせることができるし、もしかしたら何かが生まれるきっかけになるかもしれない。

次に、「得意なことをやる」。これは関心をもった対象とは必ずしも一致しない可能性はあるものの、組織運営等においては様々な役割が求められるのでその中で適材適所を行っていくことは必要だろう。

最後に、「本業を大切にする」。最後にと書いたが、最初に来ても良いくらい、これなしでは行えないことだろう。個人的に難しいと思うのはそのバランスで、本業が忙しいあるいは本業でのスキルアップを狙ってもっとそちらに時間を割きたいと考えた場合にどう折り合いをつけるかということであるが、、そこはフレキシブルに行っていくしかないか。

自分もなんかしら対象をみつけたら適宜発信を行いながら継続的に支援等行っていければと思う。


===以下、気になったこと等のメモ===
・精神・神経の病にかかる人を0にはできないが、経済・社会の状況を好転させること、かかった人を助けるコミュニティが存在すること。

最近シェアハウスが流行ったり、人とのリアルなつながりを求める動きが強まっているように思うが、本書を読んで施設に入っている子供たちの親の中にも、もしかしたら周りに相談できるコミュニティ・風土等があったらそうはなっていなかった方々もいるかもしれない、と感じた。相談できる、共感できる仲間は重要。そういった場をどう作り、どう提供していくのか。

・こういった団体を作るには、存在意義を見出す、走りながら考える、多様な仲間、コアメンバーを増やす、すべての仲間を大切に、言い出したら一人でも続ける、(組織運営の初期の経路)

最初に述べた街頭募金の例もそうだが、やはり存在意義は大事だ。他に同じような団体がいるのならばわざわざ新たに立ち上げなくてもそこの活動に参加する方がよい。それでも自分で強調したい点があるのならばそこを差別化する必要がある。

ロールモデル教育:このひとを目指したいと子供に思わせる

こういう教育もあるのかと。確かに言われてみればこうなりたいと思う像があるのは非常にわかりやすい。


・行き当たりばったりっぽいけどこれだと思ったことをやる

あれこれ考えるのも大事だけど、ある程度調べてこれだと思ったり、直感的に何かあるのならば始めてしまうのもよい。


・自己肯定感は自身の努力はもちろんだが周りの環境によるところも大きい

努力して現状を勝ち取った、と思っている人も多いと思うが、それは自分の努力によるところも大きいが環境によるところも大きいとのこと。そのような環境を提供できる大人になろう。


ちなみにライフネットの岩瀬氏も書評を書いているのでご紹介。