社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた

Table For TwoというNPOで有名な、小暮真久氏の著書。

社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた

社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた

NPOというとまだまだボランティアというイメージが強いが実はそうではない。(利益を出しすぎるのは考えものかもしれないが)継続的に活動を行うためには、NPOにもビジネス的な考え方が求められるのは同じ。活動に関わるステークホルダーそれぞれに「Win」を感じてもらう・与えることによって「Winの累乗」を生み出すことが求められるという趣旨。


NPOの活動にあたって
NPOがなんらかのミッションを掲げて解決するまでには、「知る、設計する、届ける」の3つのプロセスがあり、どれが欠けてもダメ。また、それぞれを全て自分たちで行う必要はなく、もともと現地に人脈やノウハウがある団体があれば協力することも必要と説く。

また、NPOにせよビジネスにせよ、働くにあたっては「全体感を持って仕事をする。誰かのために役立つという実感を持ちながら仕事をする。自ら課題を設定し、解決する能力を発揮する。」ということを考えることが重要とのこと。意気揚揚と社会に飛び出したものの理想と現実のギャップに苦しむことがあるのは、このいずれかが欠けているからかもしれない(自戒を込めて…)


・間接的な関係者に対する影響まで考慮する
自分には欠けていた視点。

NPOはサービスの提供を通じてミッションの実現をゴールとしています。
そしてそのミッションは、貧困の解消や地球温暖化の解決といった長期的に取り組むことで
実現可能となるものがほとんどです。ですから、水平のインパクト以上に、
できるだけ長い間、垂直のインパクトを持続させることが必要になってきます。

ある問題があった時に、人々にその問題を認知させ、問題意識を共有し、動いてもらう。そしてその動きを継続してもらう。これが問題解決までの道のりだと思うし、そのために「垂直のインパクトを持続させる」ことは非常に重要だろう。震災からもまだ2年も経っておらず息の長い支援が必要なんていっているのもこれに通ずるものがあると思う。

では、それをどうやって行うか。そこで直接的な支援対象者だけでなくその周囲への影響が効いてくる。教育支援だとしたらその対象の学生が頑張る姿を見て周りが喜んだり、自分もついていこうとおもう後輩が出てきたりすることが重要。さらに、それによってその教育支援プログラムのファンが増えていけばより活動も行いやすくなる…というようにまさにWinがつながっていくという話。

・支援サイドに対して
一方で、やはり日本だとまだまだ寄付の文化もアメリカのようには根付いておらず、そもそもいつまでも寄付のような形をとっていてサステイナブルな活動かという話も出てくる。著者は、

いいことをしたと漠然と感じるだけではなく、自分の寄付金が具体的に
どのようなインパクトを生んだのか、といった明確な結果を求める人が
増えているように思います。

と書いている。寄付を受ける側(この場合NPO)は、その分説明責任をしっかり果たして、自分たちの活動がいかに意味があり、そのゴールに対してどのように寄付が利用されているかということを公開する義務がある。

…と、いうわけでNPOにせよ、自分たちのミッションに対してアプローチを考え、他者を巻き込み、存在意義をしっかり示した上でお互いのWinを生み出していくという道をたどるのはビジネスと変わらんということでした。


TFTに対する感想
個人的には、Table For Twoの活動というのは、食事を与えるという目の前の解決にはなるけれども根本的な解決にはなっていないのではないかと感じていた。根本的解決のためには、その地域の人々が教育をうけて自分たちが自立していくような仕組みが必要なのではないかと。

しかし、本文では、

けれど給食があることで、親は子供を学校に行かせようと考えるようになります。
そうすると子どもたちは初めて教育を受けられるようになるわけです。

とあり、ハッとした。多分自分がこのような地域の貧困問題の解決にあたるとしたら上述したように教育を変えるアプローチをとっただろうけど、それだと教育の仕組みはできても実際には利用する人々がいない状況を生み出してしまいかねない。

その点、著者の場合には上記で述べたようにステークホルダーのことを考えて仕組みを設計し、自分たちの活動とその人々との良い関係を築いてきたからこそ、当初のミッションを果たしつつあるのだと思うし、TFTの直接的なミッションとは関係ないがNPOや社会起業の促進というムーヴメントを起こせたのだろうと感じた。

一方で、著者も述べているが必ずしも会社を辞めてこういった活動をする必要はなく、自分の出来る範囲でこういった活動に携わっていくこともまた重要と思う。「働きながら世界を変える」という方法もあるし、自分の出来るようにやっていくほうが結局は持続的なインパクトにつながるはずだ。