グローバル・エリートの時代

先週無事購入することができたので、こちらの本を読んだ。

グローバル・エリートの時代 個人が国家を超え、日本の未来をつくる

グローバル・エリートの時代 個人が国家を超え、日本の未来をつくる


著者は、Mck、MITSloanの方で、こちらのブログで有名。Twitterのアカウントもある。

最初タイトルを聞いたとき、また、経歴等を鑑みるに、「いかにグローバルエリートを育てていくか」に重きがおかれている本だろうと推測したが、なぜ今グローバルに展開する必要があるのか、どういう企業がうまく展開しているか、その中で個々人はどう動くべきか、といった流れとなっており、特に前半部分のグローバルな展開がうまくいっている企業の事例が豊富であった。この辺は、著者の経歴がよく出ているポイントだと思う。以下、メモ。

グローバル化の3つの波】
著者は、グローバル化のステップとして次の3段階をあげている。
1.営業・マーケなどの販売にかかわる機能
2.生産などの労働集約的機能
3.経営や研究開発なども含む企業活動全体

最初は自国で作ってそれを海外に売る、というものだったのが、海外で作って海外で売る、そして最後には海外で経営に携わる部分や開発も行って売る、というようになると。2012年現在は、第3のステップまで来ており、その中でリーダーシップをとって企業活動を行っていける人材が求められていると説いている。

ちなみに、第1、第2の波について、明治時代の生糸産業等においては商社を利用することで、また、米国との貿易摩擦においては海外工場を作ることで解決したということである。

【グローバルな組織づくりのために】
グローバルな組織づくりのためには当然人材が必要となるが、それにはいくつか方法がある。
1.多国籍人材を新卒から採用
2.若手を海外駐在・研修させる
3.中堅社員を海外派遣する
4.中途採用で他社からとってくる
このうち、1以外はあまり出来ていないという。個人的には3は企業によってはかなりできていると思うが、2は最近その傾向はあるものの短期に落ち着いている、また、4については他の社員や日本の商習慣に合わせるのが難しいということであまり進んでいないのは著者に同意できるポイントである。

4については、ざっと思いつくところではカルロスゴーンあたりか。10億近い金額をもらっているが、V字回復させて自社社員+子会社・関係会社社員+その家族の生活まで救ったことを考えると安すぎるくらいだろう。このように実績があれば日本でも高給すぎるとたたかれることはないだろうが、そのような事例が増えていくとよいと思うし、それに慣れていく必要があるだろう。CEOクラスではなくても、グローバルに活躍できる人材とそうでな人材とでは、現場レベルの社員でもこのような傾向が強まっていくことは容易に想像できるので。

【グローバルに成功した会社】
GEと小松製作所を上げている。それらの組織構築でうまくいったポイントとして、企業理念の明確化とその浸透、現地人材の育成、買収案件の見極め、新興国発のイノベーションの確立、を挙げている。

企業理念は、それが万人にうけいれられるものでなければ、それを浸透させることによってともすると後で出てくるプッシュ型になりかねないなと感じた。そうならないのは、そもそもの企業理念がしっかりしていること、研修による意識付けがうまく機能しているからだろう。また、現地人材の育成に関しては、10年以上働いている等ある程度その企業についてわかっていることが前提のようである。本書には載っていなかったが、P&Gもマネージャークラスを外からとってきてすぐ上にあげることはなく、たたき上げでやっていくのが基本らしい。とすると、業界の性質等もあるにせよ、会社への忠誠が求められるのはグローバル企業でも一緒かもしれないと感じる。

【個人のグローバル化
個人のグローバル化に関しては、感受性・理解力・柔軟性、オーナーシップ・ゼロベースの構築力・問題解決型思考、説明力・粘り強さ、の合計8項目を挙げていた。ここは正直とりたてて新しい話はないように思う。まとまってはいるが、それぞれのトピックはどこかで聞いたことがある内容であった。が、個人的に強いてあげるとすれば、オーナーシップ、粘り強さは磨いていきたいポイントである。感受性や理解力等、「他を受け入れる力」については、日本人は一般に違いを頭で理解して受け入れることはできるタイプだと思うし、問題解決・説明力等についても、ただのトレーニングの問題なので意識していれば出来るだろう。

一方で、オーナーシップや粘り強さについては、特に若い人には難しいのではないだろうか。安定を求めている人が多いなどといわれるのもこのあたりと関係していて、背水の陣で臨むというようなことが少なく、むしろスマートに生きようとしているのだと思う。出来るだけ衝突を避けて、心地よい中で生きていく、そのような姿勢がグローバル化する社会の中で危惧されているポイントではないかと思う。そのため、自分が当事者意識をもって絶対に譲らないのだ、という気持ちをもっていくことはなかなか身につけるのが大変なスキルであろうし、とはいえやっていかなければならないポイントであると思う(自戒をこめて。。)。

【その他・ただの雑感】
どうしてもタイトルに違和感を感じてしまった。。このタイトルでこの本を手に取る人々にとっては、おそらくそこまで新しい中身があるわけではないかもしれないと。むしろ、著者の呼びかけたい対象であれば「グローバルパーソン」くらいのほうがよかったかも?その辺は出版社等大人の事情もありそうなのでアレですが。

とはいえ、非常に参考になった部分もあるし、著者の強いメッセージ・心意気を感じられたポイントはよかった。ということで、著者のブログも相当濃いので今後ともチェックしていきたい。